コンビニであった、わからない話

  • 2010年5月 1日 21:00
  • 雑談

「くりっ、くりっ、くりっ、くりっ、栗と栗鼠~」

私は自分が疲れているのだと思った。仕事自体は温いと言って差し支えないほどだが、逆に言えば最近は大した遣り甲斐もなく、燃え尽き症候群にも似た状態であり、何処となくストレスが溜まっていたからだ。コンビニで好物の甘い物でも食べて束の間の幸せを得ようと思い、生クリームが大量に乗ったオニ盛りという名前のプリンを眺めていたのも、そんな理由からだった。しかし、そんな小さな幸せを目の前にした私の耳に、またもや先程と同じ声が聴こえる。

「わっけわからん、わっけわからん」

本当に訳が分からない。声の出ている方へ目線を向けると、外見からは性別不詳な人がサングラスをかけた人が、洋菓子のコーナーをショーウィンドウの横から見ながら立っていた。目を合わせて絡まれたら厄介だ。介護士という職業柄、例えどのような人に出会っても受容する事は出来る。だからと言って苦手が得手へ変化するわけではない。自分から苦手な人に関わり合おうとまでは思わない。

「くりっ、くりっ、くりっ、くりっ、栗と栗鼠~」

また同じ歌だ。この性別不詳な人の声は女性のものに思える。文字通り木の実と動物の事なのか、はたまた女性の部分という意味を持たせているのかは判らないが、男性であれ女性であれ誤解されそうな詩を歌っているのは戴けない。レジには女子高生が立っているのだし、周りには子連れの母もそれなりに居るのだ。

「わっけわからん、わっけわからん」

この人は何を不思議に思っているのだろうか。目を向ける事はせずに様子を窺っていたが、どうやらお菓子コーナー周辺を往復しているらしい。一応、何かを買いに来たのだろうか。

「何にしよっかなー、何にしよっかなー」

歌詞が変わった。だからと言って何がどうという事ではないが、もしかしたら続きがあるのかも知れない。興味をひかれた私は、自分のおやつとなるものを物色しながら聞き耳を立てた。

「こっんにっちはー」

何てこった、人に向かって挨拶をするのか。自分の世界に入っているのだと思い油断していた。近くに居ては声をかけられるかもしれない。ここへ来て自分の迂闊さに冷や汗が出る。当初眺めていたプリンではなく、チョコクレープを手にそそくさとレジへ逃げる。なるべくその人から関心を向けられないような仕草で清算していると、突然背後から声が聞こえた。

「くりっ、くりっ、くりっ、くりっ、栗と栗鼠~」

その歌詞の存在感が大きくて他の言葉が耳に入らなかったが、どうやら目に付いた人へ適当に声をかけているらしい。危機感を募らせ、自分の存在感を小さく見せようとやや必死になる。そのおかげかどうかは判らないが、その人は私の背後を通り抜けて行った。

清算が終わりレジの人への挨拶もそこそこに店を出ようとすると、その人は本を立ち読みしていた。

「わっけわからん、わっけわからん」

あの人は、きちんとわかる事が出来るのだろうか。無事コンビニを出た私は余裕の出来た心の中で、あの人の幸せを願った。

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